Cloudflareを設立したとき、インターネットが与える環境への影響を最小限にすることなど考えていませんでした。実のところ、インターネットがそれほど環境に影響を与えるものだと思っていなかったのです。当時の自分にとって、インターネットは情報やサービスにどこからでもアクセスできる魔法のツールでした。

しかし、それは極度に冷却したデータセンターに、ラックに積んだサーバー群を配置する前の話です。Cloudflareが、サーバーへ常時電力を供給し、サーバーを冷却するために光熱費を支払うようになる前の話です。1ワットの電力で処理できるリクエスト数を最大限にすることにこだわり始める前の話です。ネットワーク全体の電力コストを下げるために、再生可能エネルギー事業者から直接電力を購入するようになる、ずっと前の話です。

今では、インターネットを運用するために、どれほどの電力が必要かをよく理解しています。そのため、Boston Consulting Groupの研究を読んだ時、その内容にそれほど驚きませんでした。この研究では、全排出炭素量の2%、年間10億トンはインターネットが原因であると結論づけられています。これは航空業界全体の排出量に匹敵します。

Cloudflare:環境に優しい設計は偶然に

Cloudflareでは、インターネットに起因する環境への影響軽減を目標に掲げてはきませんでしたが、効率性は常に、中核に据えてきました。それは、「光の速さ」という昔からの宿敵と今も戦っているからです。

光の速さに勝つことができないことはわかっていたので、ネットワークを高速にするためには、私たちがインターネットユーザーのいるところに近づく必要がありました。そのためには、世界中のISPと直接提携し、そのネットワークの内側に直接当社の機器を設置してもらう必要がありました。そして、機器を設置してもらうからには、機器の電力を極力抑える必要がありました。当社のネットワーク上で負荷を分散させるネットワークテクノロジーを開発し、サイバー攻撃によるものだったり、限定スニーカーの販売によるものだったりするトラフィックの急増に対処し、利用可能な能力をすべて効率的に使う必要がありました。

効率性を求める戦い

設立からわずか2年後の2012年12月、私は、Intelのオレゴンリサーチセンターに出向き、1ワットあたりのコア数がこれまでより多いサーバーチップを私たちがどれほど必要としているかシニアエンジニアリングチームに訴えました。ただ、その時には、環境保護のためにそれが必要だとは思っていませんでした。それよりも、ISPが設置をしぶらない程度に省電力の機器を開発する手段を見つけようとしていました。残念なことに、Intelには的外れなことをしていると言われてしまいました。そこで、非常に電力効率の良いArmを含む代替品を探し始めたのです。

しかし、結果的に、効率に対するこだわりがあったからこそ、Cloudflareは、クラウドコンピューティングで環境に配慮する方向へと舵を切ったのです。2015年に発表されたAnders S.G.AndraeとTomas Edlerの研究では、オンラインの情報を1バイト処理するためにかかる平均コストが概算されました。研究データに基づいた当社で最も正確な見積もりで、業界全体の効率性の増加を加味しても、Cloudflareのデータ処理は19倍以上も効率が良いことがわかりました。

「地元」へのこだわり

私はこれを「地元の市場で買い物するか、大型スーパーで買い物するかぐらいの違い」と喩えるのが好きです。世界中の巨大なデータセンターにリクエストをバックホールするのではなく、ローカルでリクエストを処理することで、Cloudflareはインターネットを利用することで生じる環境への影響を軽減することができます。2020年、当社のお客様は、当社のサービスをご利用になっていなかった場合と比べると、550,000トンの炭素排出量の削減に貢献したと推定しています。これは、昨年の乗用車の走行距離6億3500万マイルの排出量に相当する炭素を相殺するのに匹敵します。


当社はこの成果を誇らしく思っていますが、インターネットが環境に与える影響全体から見れば、ごく一部に過ぎません。Impact Week(インパクトウィーク)について考えた時、インターネットによる環境への影響を削減することを最優先事項にしようと決めました。現在、6つに1つのWebサイトがCloudflareを利用していることを考慮すると、当社は、自分たちが変わることで世界に有意義な影響を与えられると考えています。

まだできることがある

本日より、Cloudflareの環境への影響を軽減し、環境に優しいインターネットを実現するために、4つの主要なイニシアチブを始めます。

まず、2022年までにカーボンニュートラルを実現させます。すでにグローバルネットワークの運用に再生可能エネルギーを電力として広範囲に使っていますが、エネルギー使用量の100%をカバーするためにこの範囲を拡大します。これだけではありません。私たちはさらに一歩先を目指します。Cloudflare設立から11年を振り返り、Cloudflareがグローバルネットワークを運用するために過去に排出した炭素量を相殺するオフセットを購入します。他企業より影響を少なくするだけでは十分とは言えません。地球にとって、設立当初からCloudflareが(差し引きゼロではなく)プラスであるようにしたいのです。

第2に、新しいレベルの高効率サーバーの配備に尽力していきます。Armテクノロジーをベースにしたサーバーは、これまでの半分のエネルギーで同じ量の作業をすることができます。サーバーマーケットでのエネルギー効率を優先させることで、さらに多くのチップメーカーが効率的なデザインを発売する足がかりになると期待しています。

第3に、JAMStackが使えるコンピューティングプラットフォームであるCloudflare WorkersとCloudflare Pagesで新しいオプションを発表します。これにより、開発者が最もエネルギー効率の良いデータセンターで作業量を実行するよう選択できるようになります。当社は、開発者に対して環境に最適な方法を提供できる初の大手クラウドコンピューティングベンダーであると自負しています。Green Workersを選んでも、余分なコストはかかりません。作業負荷によって若干の遅延が発生するというトレードオフもありますが、多くの開発者が十分納得できる範囲だと思います。

新基準とパートナーシップで過剰な排出量をなくす

最後に、おそらく最も野心的なことですが、多数の一流リサーチ企業とクローリング企業と協力して過剰なクローリングによる負荷をできるだけ軽減するためにオープン標準を導入します。インターネットトラフィックのほぼ半数が自動化されていますが、その大多数が悪意のあるもので、Cloudflareはそれをできるだけ効率的に阻止するように設計されています。

しかし、インターネットトラフィックの5%以上は、検索など、頻繁に使うサービスを提供するために、Webをインデックス化する正当なクローラーにより生成されます。ここで問題なのは、正当なクロールトラフィックの半数以上が、変更されていないページを再インデックスしていて、冗長化しているという点です。クロールの重複をなくすことができれば、3000万エーカーの森林を新たに作り出すのと同じことになります。努力する価値がある目標です。

Cloudflareを始めたとき、どのようにインターネットによる環境への影響を低減させられるのか、考えていませんでした。しかし、今は違います。Cloudflareは、より良いインターネットの構築に貢献することを会社の使命として掲げています。そしてより良いインターネットとは、環境に優しいインターネットを意味しているのは明らかです。