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HTTP/2 zero-day脆弱性により史上最大のDDoS攻撃が発生

10/10/2023

7 min read

本日未明、Cloudflareは、GoogleおよびAmazon AWSとともに、「HTTP/2 Rapid Reset」攻撃と名付けられた新種の脆弱性(zero-day )の存在を公表しました。この攻撃は、HTTP/2プロトコルの弱点を悪用し、巨大で超ボリューメトリックな分散サービス妨害(DDoS)攻撃を発生させます。Cloudflareはここ数カ月間、こうした嵐のような攻撃の軽減に取り組んでいました。その中には 、1秒間に2億100万リクエスト(rps)を超える、弊社がこれまでに観測した最大の攻撃の3倍ほどの規模となる攻撃も含まれています。2023年8月末以降、Cloudflareはその他の1,000万rpsを超える攻撃を1,100回以上軽減しましたが、この間DDoSの最大記録である7,100万rpsを超える攻撃が184回にも及びました。

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このzero-dayは、脅威アクターたちに、脆弱性の解析ツールであるスイスアーミーナイフを悪用して被害者を攻撃することができる、今までにない全く新しいツールを提供したのです。 これらの攻撃に対する対処は複雑で困難を伴うものでしたが、このような攻撃は、Cloudflareにとって、zero-dayの脆弱性の影響を軽減する特別な技術開発の機会となりました。

Cloudflareを使用しているのであれば、HTTPのDDoSは軽減され、保護されています。 以下、この脆弱性に関する詳細情報と、安全確保のためのリソースと推奨事項を掲載します。

攻撃のデコンストラクション(脱構築):すべてのCSOが知るべきこと

2023年8月下旬、弊社のチーム(Cloudflare zero-day)は、Standard HTTP/2プロトコル(インターネットとすべてのWebサイトが機能するために重要な基本プロトコル)を悪用する、未知の脅威行為者によって開発された新たな脆弱性を観測しました。Rapid Resetと名付けられたこの新しいzero-day 脆弱性攻撃は、HTTP/2のStreamキャンセル機能を利用し、リクエストを送信して即座にキャンセルすることを何度も繰り返すものです。  

この単純な「リクエスト、キャンセル、リクエスト、キャンセル」パターンを大規模に自動化することで、脅威アクターはサービス拒否を作り出し、HTTP/2の実装(Standard )を実行しているサーバーやアプリケーションを停止させることができるのです。 さらに、この記録的な攻撃について注目すべき重要な点は、およそ20,000台のマシンで構成される控えめな規模のボットネットが関与していたことです。 Cloudflareは、数十万台から数百万台のマシンで構成される、これよりも桁違いに大規模なボットネットを定期的に検出しています。 比較的小規模なボットネットが、HTTP/2をサポートするほぼすべてのサーバーやアプリケーションを無力化してしまうほどの可能性を秘め、これほど大量のリクエストを出力するという事実は、この脆弱性が無防備なネットワークにとっていかに脅威となるかを強調しています。

脅威アクターはHTTP/2の脆弱性とボットネットを併用し、これまでにない速度でリクエストを増幅させました。 その結果、Cloudflareのチームは、断続的にエッジが不安定になるという体験をしました。 当社のシステムは圧倒的多数の着信攻撃を軽減することができましたが、その量はネットワーク内のいくつかのコンポーネントに過負荷をかけ、断続的に4xxおよび5xxエラーが発生し、少数のお客様のパフォーマンスに影響を与えました。

これらの問題を軽減し、すべての顧客に対する潜在的な攻撃を停止させることに成功した後、弊社のチームは直ちに責任ある情報開示プロセスを開始しました。 この脆弱性を一般に公表する前に、どのように弊社のミッションを前進させ、弊社のネットワークに依存しているインターネットの大部分を保護するために協力できるかについて、同業者と話し合いました。

この攻撃の技術的な詳細については、別のブログ記事で取り上げています。 HTTP/2 Rapid Reset: 記録的な攻撃のデコンストラクション(脱構築)

Cloudflareと業界はこの攻撃をどのように阻止しているのでしょうか?

「完全な情報開示」というものは存在しません。 攻撃を阻止し、新たなインシデントに対応するためには、組織やセキュリティチームが常に侵害を想定したマインドセットが必要です。なぜなら、zero-day 、新たな進化を遂げる脅威アクターグループ、今までにはないような斬新な攻撃やテクニックが常に存在するからです。

この「違反を想定」するマインドセットは、情報共有のための重要な基盤であり、インターネットの安全性を確保するものとなります。 Cloudflareは、このような攻撃を経験・軽減しつつ、業界全体がこの攻撃に耐えられることを保証するために、業界のパートナーと協力します。  

この攻撃を軽減する過程で、弊社のCloudflareチームは、このような DDoS攻撃を阻止するための新技術を開発・構築し、この攻撃のみならず今後発生するその他の大規模な攻撃に対しても、弊社独自の軽減策をさらに改善してきました。 こうした取り組みにより、全体的な軽減能力と回復力が大幅に向上した。 Cloudflareを使用している場合、保護されていると確信しています。

また、この脆弱性を悪用されないようにするためのパッチを開発しているWebサーバーソフトウェアパートナーにも警告を発しました。 — 詳細は同社のWebサイトを参照してください。

情報開示は1回で終わりません。 Cloudflareの生命線は、より良いインターネットを確保することであり、それはこのような事例から生じています。 インターネットに広範な影響が及ばないよう、業界パートナーや政府と協力する機会があれば、規模や業種を問わず、あらゆる組織のサイバー耐性を向上させる弊社の役割を果たします。

パッチを適用する際の緩和策や次のステップに関する理解を深めるために、弊社のウェビナーにご参加ください

HTTP/2 Rapid Resetと、Cloudflare に対するこれらの記録的な攻撃のオリジンは何ですか?

Cloudflareが、こうした攻撃を最初に観測した企業のひとつであることは奇妙に思えるかもしれません。 DDoS攻撃に対して世界で最も強固な防御を持つ企業を、なぜ脅威アクターが攻撃するのでしょうか?  

実際、Cloudflareは、攻撃がより脆弱なターゲットに向けられる前に、時折攻撃を観測します。 脅威アクターは、ツールを実際の攻撃のためにデプロイする前に、ツールを開発し、テストする必要があります。 記録的な攻撃手法を持つ脅威アクターにとって、その攻撃手法がどれほど大規模で効果的なものかをテストし、把握することは極めて困難といえるでしょう。その攻撃を受け止めるだけのインフラストラクチャがないからです。弊社はネットワークパフォーマンスに関する透明性を共有し、公開されているパフォーマンスチャートから攻撃の測定値を得ることがでるため、この脅威アクターは悪用能力を把握するために弊社をターゲットにしたと考えられます。

しかしこのテストと、攻撃の早期発見能力は、弊社の攻撃緩和策の開発に役立ち、顧客と業界全体の両方に利益をもたらすことになるのです。

CSOからCSOへ:何をすべきですか?

私は20年以上CSOを務めており、このような情報開示や発表を数え切れないほど経験しました。しかし 、 Log4J で あれ、 Solarwindsであれ、 EternalBlue WannaCry/NotPetyaであれ、Heartbleed であれ、 Shellshock であれ、セキュリティインシデントには共通点があります。凄まじい爆発が世界中に波及し、私が率いたあらゆる組織を完全に混乱させるおそれがあるのです—業界や規模に関わりなくです。

これらの多くは、私たちが制御できなかったかもしれない攻撃や脆弱性だったのです。 しかし、この問題が私の制御できるところから生じたか否かにかかわらず、私が主導して成功したイニシアチブを、私たちに有利に傾かなかった多層防御と区別したのは、このようなzero-day脆弱性やエクスプロイトが特定されたときに対応する能力だったのです。    

今回のRapid Resetは違うと言いたいところですが、そうではありません。 私はすべてのCSOにこう呼びかけています—私のように何十年もセキュリティインシデントを経験してきた人であっても、今日が勤務初日という人であっても、サイバーインシデント対応チームを立ち上げ、確実な保護対策を取るべきです—今こそその時なのです。

できるだけ多くのセキュリティベンダーに対して対応する機会を与えるため、今日まで情報を制限してきました。 しかし、ある時点で、このようなzero-day脅威を公開する責任が生じました。 今日がその日なのです。 つまり、今日以降、脅威アクターはHTTP/2の脆弱性をかなりの部分把握することになるので、その悪用は必然的に容易になり、防御側と攻撃側の間の競争—パッチを当てるのが先か、悪用するのが先かが始まるのです。 組織は、システムがテストされることを想定し、確実に保護するための事前対策を講じるべきなのです。

これはLog4Jのような脆弱性を思い出させます。多くの亜種が日々出現し、そして今後数週間、数カ月、数年と出現し続けることでしょう。 より多くのリサーチャーや脅威アクターがこの脆弱性を試すようになれば、さらに高度なバイパスを含む、より短い悪用サイクルを持つ別の亜種が見つかるかもしれません。  

Log4Jと同様、このようなインシデントの管理は「パッチを当てて完了」というような単純なものではありません。 インシデント管理、パッチ適用、セキュリティ保護の進化を、継続的なプロセスに変える必要があるのです。なぜなら、脆弱性の亜種ごとにパッチを適用してリスクを軽減させることはできても、解消されるわけではないからです。

警鐘を鳴らすつもりはないですが、単刀直入に言います。これを真剣に受け止めてください。 組織に何も起こらないように、必ずアクティブなインシデントとして扱ってください。

新たな変更基準のための推奨事項

セキュリティー上の出来事は、一つとして同じものはなく、またそれらから多くのことが学べます。 CSOの皆さん、すぐに実行に移さなければならない推奨事項をここでお伝えします。 今回だけでなく、この先何年間にも渡って実行してください。

  • 外部ネットワークおよびパートナーネットワークの外部接続を理解し、インターネットに接続しているシステムは次の緩和策を実施してください。
  • 既存のセキュリティ保護と、保護すべき能力を理解し、攻撃を検出し、対応し、ネットワークに問題があれば直ちに修復します。
  • DDoS攻撃対策が、必ずデータセンターの外にあるようにしてください。トラフィックがデータセンターに到達してしまうと、DDoS攻撃を軽減することが難しくなるからです。
  • DDoS攻撃対策アプリケーション(レイヤー7)、およびWebアプリケーションファイアウォールを確保してください。 さらに、ベストプラクティスとして、DNS、ネットワークTraffic(レイヤー3)、APIファイアウォールに対する完全なDDoS攻撃対策を確実に保持してください。
  • Webサーバーおよびオペレーティングシステムのパッチが、インターネットに接続しているWebサーバーに導入されているようにします。 また、Terraformのビルドやイメージのようなすべての自動化が完全にパッチされていることを確認し、旧バージョンのWebサーバが誤ってセキュアなイメージ上でプロダクションにデプロイされないようにします。
  • 最後の手段として、脅威を軽減するためにHTTP/2とHTTP/3(これも脆弱である可能性が高い)をオフにすることを検討してください。  なぜなら、HTTP/1.1にダウングレードすると、パフォーマンスに大きな問題が生じるからです。
  • レジリエンスを持たせるために、セカンダリでクラウドベースの DDoS L7 プロバイダーをペリメータ―(境界)で検討してください。

Cloudflareのミッションは、より良いインターネットの構築を支援することです。 DDoS攻撃対策の現状に不安を感じるお客様には、DDoS攻撃を軽減するために、弊社のDDoS能力とレジリエンスを無料で提供させていただきます。この30日間、弊社はこのような攻撃と戦いながら、クラス最高のシステムをさらに向上させてきました。

さらに詳しくお知りになりたい方は、zero-dayの詳細と対応方法に関するウェビナーをご覧ください。保護されているかどうか不明な場合、またはどのように保護されるのか知りたい場合は、お問い合わせください。また、この攻撃の技術的な詳細につきましては、別のブログ記事HTTP/2 Rapid Reset: 記録的な攻撃を脱構築するで詳しく解説しております。最後に、攻撃の標的にされている場合、または早急な保護が必要な場合は、お近くのCloudflare 担当者にお問い合わせいただくか、 https://www.cloudflare.com/ja-jp/under-attack-hotline/をご覧ください。

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Grant Bourzikas|@GrantBourzikas
Cloudflare|@cloudflare

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