Software as a Service(SaaS)は、IT市場における、急成長しているビジネス分野の一つです。SaaSプロバイダーは、Webホスティングプロバイダーからサブスクリプションサービス、電子商取引プラットフォームまで、ありとあらゆるものの実行を可能にします。有名なSaaSプロバイダーが業界の巨人として君臨する一方、日々新しいSaaS企業が生まれ、それぞれが次のSalesforceになる可能性を秘めています。
しかし、急成長している分野とはいえ、あなたがSaaS企業にお勤めの方であれば、この道を切り開くのは容易でないことはご存じでしょう。
Cloudflareは、4年前にSaaSのお客様を支援する「SSL for SaaS」と言う名称のソリューションをリリースしました。お客様のWebサイトとSSL証明書の大規模管理が必要な方に最適で、WP EngineからShopify、HubSpotまで、世界の主要なSaaS企業のいくつかで採用されています。製品が進化するにつれて、本製品は高速な読み込み時間、比類のない冗長性、最強のセキュリティをお客様に提供しようとしているSaaSプロバイダーのワンストップショップになりました。現在、1,000万を超えるアプリケーションがSaaSプロバイダーを通じてCloudflareネットワークの完全なメリットを継承しています。
本日まで、SSL for SaaSは企業のお客様のみを対象に提供しておりました。本日、私たちのSaaSソリューションが、すべての方を対象に提供するようになりましたことをお知らせできることを嬉しく思います。そして、リリース当初からの製品の進化を反映し、名称を「Cloudflare for SaaS」に変更します。
ベータ版は本日より利用可能です。お試しいただくにはこちらからリクエストを送信してください!
SaaSビジネスを開始する場合、私たちの提案する価値は明確です。基盤となるインフラを「Cloudflare for SaaS」が引き受けることで、お客様のチームはコアソリューションの構築に集中し続けることが可能になります。私たちは何年もかけて証明書発行に投資し、セキュリティとパフォーマンスに関する一連の製品を構築してきました。そして今、私たちがお客様のドメインに提供するすべての利点を、お客様のエンドカスタマーにまで簡単に拡張できるようになりました。
SaaSビジネスの構築は技術的に難しい
私たちは、SaaSビジネスを成功させるために必要な多くの課題を、身をもって知っています。私たちは、お客様にビジネスの進め方をお伝えするつもりはありませんが、インフラの中核的な要件について私たちが学んだこと、そしてCloudflareがどのようにそれらに対応できるかをお伝えすることはできます。
現在、多くのSaaSプロバイダーがサービスを提供する方法は、自社のオリジン(または多くの場合Cloudflare)上でホストされるWebアプリケーションをお客様に提供することです。
例えば、あなたが電子商取引サイトを構築するためのSaaSサービスを構築しているとします。あなたはmyshop.example.comのような専用のサブドメインをお客様に提供することができます。しかし、あなたのお客様は高い可能性でmyshopsactualname.comでアプリケーションを実行するように求めてきます。お客様にブランド体験を提供するために、SaaSプロバイダーはバニティドメインをサポートすることが求められています。
これは思いのほか面倒です。
アプリケーションを立ち上げることができたら、次のステップとして、SaaSプロバイダーのアプリケーションとそのお客様の両方にTLS証明書をプロビジョニングすることになります。開発者は、認証局へのAPIコールを中心としたパイプライン全体を構築しなければならないような、自前のソリューションの構築を検討し始めるかもしれません。これは、証明書を検証し、更新し、保管することに他なりません。証明書の障害を防ぎ、お客様のアップタイムを確保するためには、多くの状態を考慮する必要があり、これは多額のエンジニアリング投資につながります。
ですが、この時間をビジネスのコア部分を構築するための技術的努力に当てることはできません。
私たちの言葉をそのまま信じる必要はありません。私たちは「SSL for SaaS」を構築するにあたり、複雑な証明書管理システムの管理に課題を抱えていたクラス最高のエンジニアリングチームから学ぶことができました。例えば、HubSpot社は、2015年に自社ソリューションを展開し、お客様間で共有されるSSL証明書を導入しました。このソリューションは、スケーリングの問題に直面し、証明書の展開に時間がかかり、お客様に満足のいかない経験をさせることになったため、短期的な解決策となりました。
SSL for SaaSへ
クラウドフレアは長年、私たちのビジネスの核心である証明書のプロビジョニングと管理に注力してきました。2014年にユニバーサルSSLを立ち上げたとき、数百万もの証明書が管理できるSSLパイプラインを構築しました。その後、2017年には当社のマネージド証明書発行プラットフォームのメリットをSaaSプロバイダーのお客様にも拡大し、そのお客様が管理を担当されているお客様のWebサイトのセキュリティを確保できるようにすることを決定しました。
これにより、Hubspot社のようなお客様では、大量のエンジニアリングの労力を割くことなく、何千ものドメインを保護することができるようになりました。しかし、「SSL for SaaS」はもともと、お客様やお客様のお客様に代わって証明書の発行、管理、更新を行うために構築されましたが、私たちはこれにとどまることなく、ソリューションを大幅に拡張しました。
SSLを越えて
SaaSプロバイダーにとって、お客様のビジネスが、オンラインであること、常に利用可能であること、そしてパフォーマンスが高いことは念頭に置くべき問題です。お客様がビジネスを契約するとき、SaaSプロバイダーが行っている根本的な約束事はこれです。
インターネットでは、日々、攻撃や悪意のあるトラフィック、予期せぬリクエストの急増などに見舞われています。
Cloudflareでは、お客様のアプリケーションとオリジンを保護するソリューションを提供するために、最も大規模で耐障害性の高いネットワークの構築に多大な投資を行ってきました。これは、私たちがお客様に提供するコアバリューの一つであり、今ではSaaSプロバイダーも同様にお客様に提供することができるようになっています。DDoS軽減機能、回復力のあるWebアプリケーションファイアウォール(WAF)、キャリアグレードのボット管理ソリューションが組み込まれており、お客様やお客様のお客様にとってコストのかかる障害やダウンタイムを防ぐことができるため、誰が攻撃者にターゲットにされても、お客様はオンライン状態を維持することができます。
お客様のエンジニアやサポートチームの負担を軽減するだけでなく、エンドユーザーにも簡単にセキュリティ設定を継承してもらうことができます。あなたが設定したベネフィットがどのようなものでも、お客様は即座にそれを受け入れることができます。
セキュリティを越えて
ビジネスである以上、あなたはユーザーに対して最高の体験を提供したいと考えるでしょう。速度は、私たちがオンライン体験をどのように受け止めるかに大きな役割を果たします。
SaaSビジネスでは、パフォーマンスへの投資は必須です。その際、お客様の目は世界中にあり、エンドユーザーが必ずしもオリジンサーバーの近くにいるとは限らないことを念頭に置いておく必要があります。
「Cloudflare for SaaS」では、100か国以上のデータセンターからなる当社の高性能なAnycastネットワークを利用することができ、キャッシングやArgo Smart Routingなどのスピードとパフォーマンスの機能と組み合わせることで、パフォーマンスを30%向上させることができます。つまり、電子商取引サイトのオリジンサーバーが北米にある場合、アジアにいるグローバルなお客様にも、米国の訪問者と同じ高速な読み込み時間を提供し、すべてのお客様に最高の体験を提供することができるのです。
巨人...そして未来の巨人たちのために構築
1月、私たちはTwitterで「SSL for SaaS」のベータ版を公開したことを発表しました。予想外だったのは、ベータ版ユーザーの80%がWorkers上でSaaSアプリケーションを構築していたことです。振り返ってみると、SSLパイプラインの管理とスケーリングがコアビジネスの構築から貴重な時間とリソースを奪うのと同じように、インフラの管理とスケーリングにはコストと時間がかかります。
「Cloudflare for SaaS」と「Workers」を組み合わせることで、証明書の管理、セキュリティ、パフォーマンスだけでなく、インフラの負担も私たちが引き受け、SaaS企業はこれらのことから開発者を解放することができます。
コードを書いたら、あとは私たちが引き受けます。
開発者のために作ることの醍醐味は、彼らの作るものを見ることができることです。ここでは、これまで説明したような道を辿り、私たちのプラットフォームですでに構築された、素晴らしいプロジェクトのいくつかを紹介したいと思います。
Statusflare:ステータスページプラットフォーム
Statusflareは、Webサイトやアプリケーションを監視するためのツールであり、これを知らないことはダウンタイムを経験する以上の損をしいると言えるでしょう。Statusflareチームは、企業が世界中にグローバルチェックを展開し、稼働時間、メトリック、サーバー応答時間を監視できるソリューションを構築しました。さらに、お客様がサービスの可用性について常に情報を得られるよう、ステータスページを展開することも可能にしています。
ステータスページ製品を構築するにあたり、StatusflareチームはWorkersをデプロイメントプラットフォームとして使用することを決定しました。これにより、オリジンサーバーのデプロイに煩わされることなく、コードを書いたりAPIを構築したりすることに時間を費やすことができるようになりました。Statusflareのチームは、アプリケーションの構築を終えると、それをお客様のバニティドメインと統合し、誰でも自分のウェブサイトにステータスページを設置できるようにしました。
この時彼らが直面した課題は、お客様に製品の最新版をお届けすることでした。手始めに、彼らは自分たちのソリューションをオープンソース化し、お客様にWorkersスクリプトを提供してそれを導入してもらい、ステータスページを立ち上げてもらうことにしたのです。しかし、これではアップデートが煩雑になるため、エンドユーザーに最新版を提供するのではなく、お客様がアップデートを担当するという事態になってしまいました。
それだけでなく、お客様のページの保護を維持するために、証明書を発行する認証局との連携にも時間を費やさなければならない事態になってしまったのです。
Statusflareは、「Cloudflare for SaaS」が同社の成長を支援する完璧なソリューションであることに気付きました。カスタムドメイン用の使いやすい統合機能により、今ではいくつかのボタンをクリックするだけで、エンドユーザーはバニティドメインを使用し、ステータスページの最新更新を取得し、証明書を配備することができるようになりました。さらに、Statusflareは現在、Cloudflare AccessやTeamsとの自社ソリューションの連携を検討しており、これが実現すれば同社のお客様は監視を非公開にし、許可されたユーザーのみに許可することができるようになります。セキュリティとレート制限が組み込まれているため、Statusflareは受信リクエストの数やアプリケーションのスケーリングを心配する必要がありません。Statusflareは、すべてを1つの場所で管理できることで、サーバーのスケーリングやプロビジョニングを心配する必要がなく、お客様のドメインの可用性を心配する必要もなく、アプリケーションを安定させるために時間を投資する代わりに、コードを書いて製品を構築することに集中できると非常に興奮した様子で話してくれました。
Cloudflareはそれ自体でスケーリングするため、我々のアプリケーションのスケーリングは無限大です。- Statusflare創設者 Adam氏。
PLUMA:ブログとポッドキャストを公開するためのオールインワン・プラットフォーム
PLUMAは、現在制作中のオーディオホスティングサービス、ブログプラットフォーム、およびWebサイトやモバイルアプリのためのプライバシー重視の分析サービスです。Workers上にに構築されているため、アプリケーションはCloudflareのエッジで完全に動作し、0ミリ秒のコールドスタートが可能です。Workers KVを使用することで、PLUMAはセッションデータ、静的ファイル、ログなどすべてのデータをCloudflareのエッジに保存し、エンドユーザーに低遅延のサービスを提供することができます。PLUMAユーザーからの最大の要望の1つは、PLUMAが提供するドメインではなく、お客様独自のブランドドメインを使用できるようにすることでした。「Cloudflare for SaaS」を利用することで、PLUMAはエンドユーザーにこのような体験を簡単に提供でき、さらにTLS証明書でお客様のサイトを安全に保つことができます。
「Cloudflare for SaaS」は、任意の数のドメインをWorkersと簡単に統合することができます。このため、Cloudflareは低遅延のサーバーレスアプリケーションを構築するための素晴らしいプラットフォームとなっています。- PLUMA創設者 Pier Bover氏
Plink:ポッドキャスト用スマートリンク
Plinkは、ポッドキャスト用のユニバーサルリンクを作成します。お客様からの最も多かった要望の一つが、独自のカスタムドメインを持つことでした。立ち上げたばかりのスタートアップ企業であるPlinkは、アプリケーションの最適化、拡張、ユーザーへのカスタマイズされたエクスペリエンスの提供を支援する費用対効果の高いソリューションを探していました。WorkersとWorkers KVを使うことで、DevOpsを意識することなく、コアスクリプトと機能を最適化することができました。これに「Cloudflare for SaaS」を組み合わせることで、お客様のお客様が所有する外部ドメインに対して、自社サービスの「カスタムブランド」体験を実現することができたのです。
PlinkのAPIとCloudflareのAPIの接続は、シームレスな体験でした。一般に、Workersでの構築は素晴らしいものです。「Cloudflare for SaaS」でPlinkのお客様にブランド体験を提供できることに興奮しています。 - Plink創設者 Scott Mathson氏
Cloudflare for SaaSを今すぐお試しください!
開発者が次のSaaSアプリケーションの構築に着手するとき、もう二度と考えたくないようなことが山ほどあります。エンジニアのリソースはインフラ整備ではなく、次の10億ドル規模のビジネス構築に時間を当てるべきです。
私たちはそれを可能にします。そして、本日発表されたベータ版では、すべての人にそれを提供します。
その結果、残りの部分を私たちが担当することでお客様は次の画期的なSaaSビジネスを構築することができます。こちらからベータ版へお申し込みください。ベータ版では、各ドメインに20のカスタムホスト名を割り当て、順次お客様を追加していく予定です。
ベータ版への参加希望はこちらから!
企業のお客様、ご期待ください
私たちはすべての方に「Cloudflare for SaaS」を提供できることに非常に興奮していますが、私たちの最大の企業のお客様は、要求の厳しい特殊なニーズを持っていることも知っています。私たちは、そのような方々にご満足いただけるよう、新しい機能の構築に励んでいます。近日中にエキサイティングな発表を行いますので、ご期待ください。